ハ ワ イ 報 告(3)

清 史 彦

 

6.ワイアナエ*差別の実状

今回の旅の一番の目的地ワイアナエに向かいました。住民の半分以上がハワイ人という地域で、差別のひとつの結果として、ハワイで最も貧しい地域になっていま

す。

ちなみに僕の持っていた昭文社の旅行ガイドブックには「観光客向けの店もレストランもなく、ツーリストが無防備にふらふらするのはすすめない」と書いてありました。

現地の人を蔑視したとてもいやな表現です。ワイキキでの「運河の外へ行くな」といっしょですね。

 また数年前にも、JTBのガイドブックに「海岸で遊んでいると、小錦のようなでかい人が現れてこわかった」という話が載って、ワイアナエの人達が、差別だと抗議したことがあったそうです。

7.農場での生活

ドライブインで中華料理の昼食を取りました。少し注文しすぎて食べ残してしまいましたが、

そこは農場の方々はこころえたもので、さっさとランチボックスへ入れて持って帰り、それが夕食の一部になりました。こういうことがさらりとできるのは、好きです。

 


ゲストハウスからの眺め

このワイアナエにある農場のゲストハウスに三泊して研修します。

農場は大きな山からのびるふたつの尾根の間にあり雄大なながめです。

沖縄から来られた彫刻家の金城実さんは、着いたとたんに「来ましたよ、お世話になります」と、素晴らしい山に向かってあいさつを始め、さらに製作意欲がわいてきたのか、さっそく粘土をこねだしました。

僕たちは宿舎で一服した後、夕方まで、ビーチに行きました。

ワイキキと違って、人のいない広い広い空と海でした。

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8.収奪の歴史

カソリックの牧師(ジジさん)のお話し

 元々はこの土地はハワイ人がタロイモなどを育て、魚を採って暮らしていました

が、白人が入ってきて住民を追い出し、サトウキビのプランテイションにしました。

その後プランテイションも他へ移って、荒れ地になっていたところへキリスト教会の事業として農場を開きました。

伝統的な農業、タロイモ、バナナなどの栽培、蜂蜜取り、そして蛋白源としての魚の養殖などをし、横の小学校と協力して子供達にも学んでもらっています。

それらを通して、現在の白人優位の社会の中で自分自身への自信を失っているハワイの人達の自信を回復したいのです。

人が変わるのは教育です。

それも、読み書きや計算や評価ではなく、人が自分の人生にとって大切なことを学んだとき、物事の結果ではなく何故なのかを見たとき、人は変わるのです。

もちろん本質的なものの考え方が変わるには永い時間がかかりますが、やり続けることが大切です。


タロイモ畑で天を指す和田稠

ハワイには土地(地球の陸の一部分)という概念はありませんでした。

それは、私たちを養うものという意味でアイナと呼ばれました。

そのような大地への尊敬、愛情を失って全てが変わってしまいました。

現在この地域には四つのゴルフコースがあり、その内三つが日本資本です。

水の貴重なこの地で、膨大な水を使い、周りを汚染しています。

それが現状です。

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9. 金城 実さんの感想

 いのち、スピリッツ(精神、神髄)というものが在ります。

私たちはそれに値をつけたり、買ったりはできません。

あの山はもしかしたら買えるかもしれませんが、そのスピリッツは決して買うことはできません。

土地もいっしょです。

いのちの根本、大地です。

 


語る金城実

**********『ハワイ報告』(4)につづく**********

 

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