正信偈講話

『顛倒』連載版〜2014年11月開始〜


 
『顛倒』連載 第十二回

光炎王(こうえんのう)
 仏光照曜最第一
 故仏又号光炎王
 三塗黒闇蒙光啓
 是故頂礼大応供


今月は、光炎王です。
曇鸞大師の『讃阿弥陀佛偈』では、

仏光照曜最第一 故仏又号光炎王
   三塗黒闇蒙光啓 是故頂礼大応供



 これまた内容は、和讃とほとんど一緒です。
 簡単に訳してみましょう。

 阿弥陀佛の光明の照らし耀くさまは、諸佛の光明に勝れて最大で第一であるから、光炎王と呼ばれます。 だから、三悪道(三塗)の暗い闇までにも至り届いて、よくその闇を破り、極重の悪人を救います。 まさに一切衆生の供養を受けるにふさわしい(大応供)阿弥陀佛を馮むべきです。

 言葉を観ていきましょう

 三途 とは、地獄・餓鬼・畜生の三悪道をいいます。人間の行いによって引き起こされる世界のことです。

 地獄 と聞けば、鬼に責められ猛火に焼かれる苦しみの世界という物 語を思い出す方も多いでしょうが、それらの物語は、今を生きる私たちへの戒めとして語られてきたものです。

「ウソをついたら地獄の鬼に舌を抜かれる」とか「バチが当たる」とかです。 事実として直ちにそのような事が起こることはありませんが、そういった物語を通して先人たちは自分の生き方を律してきたわけです。 翻って現代はそのような物語、神話を否定した時代で、それでどうなったかというと、何でもあり、 自分の思うようにする事だけが善い事だと、自分で地獄を造りだしています。

 家庭や職場で全く言葉が交されなかったり、世界を観れば、自分たちの主張だけが正義だと世界中で戦争が絶えない。 そんな人間の姿が「黒い闇」と譬えられるのです。

 餓鬼 とは、貪りの心で、他者のいのちや 権利や損や迷惑をかえりみずに自 分だけ得をしようとする有り様。欲しい欲しいと、どこまで手に入れても満足できない姿です。

 畜生 とは、飼い牛のように、自分の選び が無く、鼻づらを引き回されるような在り方。声高に言われるとそうか なと信じ込んでしまう。オレオレ詐欺から、原発必要神話、安全保障神話に至るまで。自ら判断し行動することが無い。

 なぜ人間はそのような三悪道になってしまうのか。それは本当の事が観えていない事に尽きます。 今だけ此処だけ自分だけを観ようとしても観えません。阿弥陀佛とは永遠無限の光、真実の眼を我々に与えます。 そのような視点を持って初めて、我々の黒い闇、無明が晴らされるのです。三悪道が真実の炎によって燃やし尽くされるのです。



―――以上『顛倒』15年11月号 No.383より ―――

          

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