正信偈講話

『顛倒』連載版〜2014年11月開始〜


 
『顛倒』連載 第二十二回
  成等覚證大涅槃
    必至滅度願成就


 今日の部分をサラッと訳すと、「等覚を成り大涅槃を証することができるのは、 阿弥陀佛の必至滅度の願(第十一願)が成就されたことによる」です。 では先ずこの第十一願(必至滅度の願)を観てみましょう。 それは『無量寿経上巻』にある、
「設我得仏、国中人天、 不住定聚 必至滅度者、不取正覚」 (たとい我れ仏を得たらんに、国中の人・天、定聚(じょうじゅ)に住し、 かならず滅度に至らずは、正覚を取らじ) です。上巻は阿弥陀佛の章ですから、 この「国」「浄土」です

 一方、第十一願の対として第十一願成就文があります。 阿弥陀佛の願いが成就した文、『無量寿経下巻』の、
「其有衆生、生彼國者、皆悉住於 正定之聚。所以者何。 彼佛國中、無諸邪聚 及不定聚」 (それ衆生ありて 彼の国に生ずれば、みなことごとく正定聚に住す。 ゆえはいかん。彼の仏国の中には、 もろもろの邪聚(じゃじゅ)および不定聚(ふじょうじゅ)なければなり。)です。 下巻は人間の章ですから、「彼の国」が「浄土」です。どちらも「定聚」が課題です。

 「定聚」とは「浄土往生が定まり、 必ずさとりを開いて仏になることが決定している人たち」という意味です。

 さらに第十一願成就文に続いて第十八願成就文がありますが、 この読み方で、浄土真宗が出来上がったという、大切な部分です。 それが、「諸有衆生、聞其名號、信心歡喜、乃至一念。至心回向。 願生彼國、即得往生、住不退轉」です。

 ここを親鸞聖人までの方々は、「もろもろの衆生、其の名号を聞きて信心歓喜し、 乃至一念して至心に回向し、彼の国に生まれんと願ずれば、 即ち往生を得て不退転に住す」と読まれていました。 だから、私が修行して至心に回向する。 ということになるのですが、親鸞さまは、太字の部分を、「乃至一念せん」。 で切り、続いて、「至心に回向したまえり」。と読まれたのです。 これで、「信心歓喜し乃至一念する」のは人間。阿弥陀佛を信頼し念佛申すのです。 そして、修行して「至心に回向される」のは阿弥陀佛です。 すなわち、私たち人間が南無する以前に、阿弥陀佛が大きな修行をして、 至心に南無と回向してくださっておられる。ということなのです。 だからその阿弥陀佛の願い誓いによって、私たちの浄土往生が定まり、 定聚に住し、必ず滅度に至る事ができることになったわけです。

 結果、今月の正信偈の文章は、 「阿弥陀佛が先立って大きな修行をされ、 私たちに対して大きな利益を回向して下さっているからこそ、 私たちが佛のりとしい境地を得る事ができ、全ての人たちと共なるきな涅槃、 すなわち、人間の本能から起こる精神の迷いがなくなった状態・心の安らぎ、 心の平和によって得られる楽しい境地を、私が私の場で証する事ができる」 という味わいとなります。

―――以上『顛倒』16年11月号 No.395より ―――

          

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