親鸞聖人の生涯
〜『顛倒』連載版〜第3回
「弥陀の五劫思惟の願をよくよく案ずれば、
ひとえに親鸞一人がためなりけり。
されば、そくばくの業をもちける身にてありけるを、
たすけんとおぼしめしたちける本願のかたじけなさよ」
------------------(歎異抄)
この弥陀の五劫思惟の願というのは、
親鸞が最も尊重した仏教経典「大無量寿経」のなかにあらわされている。
それによれば、弥陀の五劫思惟の願とは法蔵の本願の成就である。
法蔵とは、法の蔵という意味であり、法とはかりに真理という意味であるとすれば、
無限の真理がしまわれている蔵という意味になる。
しまわれてあるということは、あらわになっていないということで、
その真理をあらわにするというはたらきが、弥陀の五劫思惟の本願なのである。
もしそうとすれば、私の基盤となっている「はじめなき世界」は法であり、
私には私の法蔵が存在することになる。その蔵の扉をひらく道を、
私に先立ってひらいていったのが親鸞である。こういう意味で親鸞の足跡をさぐりつつ、
私自身の法蔵をひらく糸口をうることにしようと思う。
―――東本願寺刊『親鸞読本』より ―――
○<住職のコメント>
この物語自体は神話だけれど、現実のお釈迦様の物語が下敷きになっていると考えると分かりやすい。 そしてそれが、お釈迦様だけではない。 今を生きる私達一人ひとりのことでもあると親鸞は言うのである。 「私の存在の奥深くにある法蔵を開きなさい」と、 「今さえ自分さえ良ければという思いで生きている私達だけれど、 本当に素直に自身の存在の奥深くに戻れば<あらゆるいのちと共なる世界に出会いたい>と 存在自体が願っているんですよ」と。
注:梵語 Dharmakara の意訳。 原義は「法の鉱床」・「法の堆積」という意味であり、 一切衆生のよりどころとなっている真理を蔵して失わないの意としてこの訳に定まる。 経(大無量寿経・略して大経)に「世自在王仏(せじざいおうぶつ)が世にでられたとき、 国王が仏の説法を聞いて、一切衆生の救いはこのほかにないとよろこび、 仏になってその道を成就しようと思い立ち、国をすてて沙門(しゃもん)となり法蔵と名のった」とある。 無上正真の道を得たときの名が阿弥陀仏である。
―――以上『顛倒』07年10月号 No.286より―――
- 目次
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