親鸞聖人の生涯
〜『顛倒』連載版〜第63回
親鸞は関東に住んで20年が過ぎたころ、京の都に帰る決意をした。
なぜ60歳を超えた親鸞が、帰洛を決意したのかについては、さまざまな説がある。
しかし、親鸞が関東にいたころからはじめ、生涯にわたって何度も筆を加えながら専念し続けていたことがある。
それは、主著『
法然が亡くなったあとの都では、法然によって公にすることが禁じられていた『
このような都の状況を聞いていた親鸞は、法然が『選択集』に著した念仏の教えの真意を明らかにすることこそが、
自分の生涯を尽くしてなすべきことであると『教行信証』の執筆を決意したのである。
−−−【親鸞 生涯と教え より】−−−
○<住職のコメント>
◎今月は、親鸞さまが京都に戻られた一番大きな理由とされる、『教行信証』の事を取り上げます。
『教行信証』は親鸞の主著ですが、自説の部分は少なく、ほとんどが、種々の書物からの引用で出来上がっています。 そして、多くの先達方が述べておられる事を根拠として、「ただ南無阿弥陀仏」という、 師法然の教えを証しする形になっています。 その膨大な内容を見ると、いかに親鸞が、多くの書物を紐解いて学んでおられたかが、よく伺えます。 それには、先ず多くの書物を見ることができる、現代で言えば図書館が必要です。 関東時代に親鸞さまは、鹿島神宮によく足を運ばれますが、それは神宮の書庫に行かれていたと考えられます。 しかしどうしても地方では限界があり、より多くの書物に触れられる、 京の都にあるように、法然批判は、京都で行われていますから、 その中心で法然擁護の論戦を張ろうとされたとも考えられます。
さて法然批判の中心は、栂尾の明恵というお坊さんです。 現代では紅葉の名所、栂尾高山寺。 深い山に籠って厳しい修行をされている、さぞや立派なお坊さんであったと思われます。 そのように「善行」を積んでいる人にとって、その根本である「菩提心」まで否定する、 法然の『選択集』は、決して許されないという事でしょう。 現代でも、自分で努力しない他人任せは、批判されますから。
でもそこが、誤解なのです。 法然や親鸞の言う、「自力(の菩提心)の否定」とは、「人間の菩提心」の限界を言うのです。 それが人間のものである限り、どうしても、 「出来る事はするけれど、出来ない事はしない」と自分で自分の限界を決めてしまいます。 また、出来ると今度は、「自分が偉い」と舞い上がります。その程度だということです。
そうではなく、出来る出来ないに関わらず、するべき事をしようとする、し続ける事ができる。 結果は阿弥陀佛にお任せするからこと、本当に「自力を尽くす」ことができる、 それが「他力(阿弥陀佛の力)の菩提心」ということなのです。 「自分でする」事は「あたり前の事だ」とも言えるでしょう。
『教行信証』は親鸞の主著ですが、自説の部分は少なく、ほとんどが、種々の書物からの引用で出来上がっています。 そして、多くの先達方が述べておられる事を根拠として、「ただ南無阿弥陀仏」という、 師法然の教えを証しする形になっています。 その膨大な内容を見ると、いかに親鸞が、多くの書物を紐解いて学んでおられたかが、よく伺えます。 それには、先ず多くの書物を見ることができる、現代で言えば図書館が必要です。 関東時代に親鸞さまは、鹿島神宮によく足を運ばれますが、それは神宮の書庫に行かれていたと考えられます。 しかしどうしても地方では限界があり、より多くの書物に触れられる、 京の都にあるように、法然批判は、京都で行われていますから、 その中心で法然擁護の論戦を張ろうとされたとも考えられます。
さて法然批判の中心は、栂尾の明恵というお坊さんです。 現代では紅葉の名所、栂尾高山寺。 深い山に籠って厳しい修行をされている、さぞや立派なお坊さんであったと思われます。 そのように「善行」を積んでいる人にとって、その根本である「菩提心」まで否定する、 法然の『選択集』は、決して許されないという事でしょう。 現代でも、自分で努力しない他人任せは、批判されますから。
でもそこが、誤解なのです。 法然や親鸞の言う、「自力(の菩提心)の否定」とは、「人間の菩提心」の限界を言うのです。 それが人間のものである限り、どうしても、 「出来る事はするけれど、出来ない事はしない」と自分で自分の限界を決めてしまいます。 また、出来ると今度は、「自分が偉い」と舞い上がります。その程度だということです。
そうではなく、出来る出来ないに関わらず、するべき事をしようとする、し続ける事ができる。 結果は阿弥陀佛にお任せするからこと、本当に「自力を尽くす」ことができる、 それが「他力(阿弥陀佛の力)の菩提心」ということなのです。 「自分でする」事は「あたり前の事だ」とも言えるでしょう。
―――以上『顛倒』2013年9月号 No.357より―――
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