親鸞聖人の生涯

〜『顛倒』連載版〜

 第66回


天竺(てんじく)
    龍樹菩薩
    天親菩薩
震旦(しんだん)
    曇鸞和尚
    道綽禅師
    善導禅師
和朝(わちょう)
    源信和尚
    源空聖人 已上七人
聖徳太子(しょうとくたいし)
    敏達(びんだつ)天皇元年
    正月一日誕生したまう
仏滅後一千五百二十一年に当れり也

−−−【真宗聖典 東本願寺刊 より】−−−


 ○<住職のコメント>

 親鸞は76歳で、『浄土和讃』『高僧和讃』を撰述されるが、右の引用文は『高僧和讃』の最後の部分で、七高僧の国と名前である。今月は簡単に七高僧を辿ってみる。

龍樹(りゅうじゅ)
 天竺だからインド、それも南インドの方。『中論』が主著で「大乗仏教の祖」。般若心経の「色即是空」で有名な「空の思想」の説いた方。「空」とは、「何も無い」ではなく、54「何でもない」ということ。「物事には固定的な実体は無く、流れ移ろっていく」という事、また、「色」とは「存在」の事で「色即是空 空即是色」とは「あらゆる物事は移ろってゆき、その移ろいがまた時に形と成る」といった意味。『方丈記』の「ゆく河の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて」である。「諸行無常」

 
天親(てんじん)
 天竺でインドだが、現在のパキスタン・ペシャーワルの出身。『浄土論』『唯識』が有名で、私たちに直接つながる「浄土教」の祖師。『浄土論』は『願生偈』という歌として説かれており、「浄土に生まれる願いの歌」として今も勤行に頻繁に、主なものでは「初七日」のお勤めに用いられる。『唯識』は人間の深層心理を分析した学問で、現代でも多くの心理学者が研究する対象となっている。

曇鸞(どんらん)
 震旦とは中国のこと。中国南北朝時代の僧。天親の『浄土論』を注釈した『浄土論註』が主著。「末法無仏の時代には、他力の信心による浄土往生による成仏以外にない」と説いた。親鸞は『浄土論註』を、あえて『註論』と呼んで、「経」「論」「註」の「論」の位置づけを与えている。

道綽(どうしゃく)
 中国唐代の僧、562年生れ。親鸞は正信偈で「道綽は、自力の道は確かではないことをはっきりされた」と讃える。ちなみに親鸞の名は、天親・曇鸞であり、吉水入門時の名は道綽・源空である。

善導(ぜんどう)
 中国浄土教の僧、613年生まれ。「称名念仏」を中心とする浄土思想を確立し、法然・親鸞に大きな影響を与え、親鸞は正信偈で「善導は独り佛の正意を明かせり」と讃えている。『観無量寿経疏』『法事讃』『往生礼賛』などが主著で、お勤めにもよく用いられる。法然の専修念仏の教えは、善導の『観無量寿経疏』の中の「一心に弥陀の名号を専念して、行住坐臥に時節の久近を問はず、念々に捨てざる者は、是を正定の業と名づく、彼の仏願に順ずるが故に」という文に拠っている。

源信(げんしん)
 和朝は日本のこと。平安時代中期の天台宗の僧。942年、現在の奈良県北葛城郡当麻に生まれる。『横川法語』『往生要集』などを著し、地獄極楽を説かれた。現在にも伝わる「血の池地獄」「針地獄」などはみな、この『往生要集』の内容。親鸞は正信偈で「源信は広く一代の教えを開いた」と讃える。

源空(げんくう)
 =法然房源空(ほうねんぼうげんくう)1133年〜1212年、親鸞の師。比叡山で学び「智慧第一の法然房」と称されるが、1175年(親鸞二歳)に山を下り、京都の町中で、専修念仏の教えを説かれた。著書は『選択本願念仏集』で浄土宗の開祖。親鸞は88歳の時のお手紙に「故法然聖人は『浄土宗のひとは愚者になりて往生す』と候いし」と記され、正信偈では、「本当の師である源空は佛教を明らかにし」と讃仰されている。


―――以上『顛倒』2013年12月号 No.360より―――

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