親鸞聖人の生涯
〜『顛倒』連載版〜第65回
76歳 一月二十一日『浄土和讃』・『浄土高僧和讃』を撰述
一二四八(宝治二年) 戊申
◎浄土高僧和讃(真宗高田派専宗寺蔵)
(高僧和讃百十七首略)
弥陀和讃高僧和讃都合
二百二十五首
宝治第二戊申歳初月
下旬第一日釈親鸞 七十六歳
書之畢
見写人者必可唱南無阿弥陀仏
−−−【親鸞聖人行実 東本願寺教学研究所編 より】−−−
(48)
不可称不可説不可思議の
功徳は
龍樹菩薩
天親菩薩
曇鸞和尚
道綽禅師
善導禅師
源信和尚
源空聖人 已上七人
正月一日誕生したまう
仏滅後一千五百二十一年に当れり也
(49)
かの
ひとしく衆生に
−−−【真宗聖典 東本願寺刊 より】−−−
一つには、一切の神明ともうすは(中略) 神明の方便にかりに神とあらわれて、
衆生に縁をむすびて、そのちからをもってたよりとして、ついに仏法にすすめいれんがためなり。
これすなわち、「和光同塵は結縁のはじめ、八相成道は利物のおわり《(摩訶止観)といえるはこのこころなり。
さればいまの世の衆生、仏法を信じ、念仏をももうさんひとをば、神明はあながちにわが本意とおぼしめすべし。
このゆえに、弥陀一仏の悲願に帰すれば、とりわけ神明をあがめず信ぜねども、そのうちにおなじく信ずるこころはこもれるゆえなり。
二つには、諸仏・菩薩ともうすは、神明の本地なれば、いまのときの衆生は、阿弥陀如来を信じ念仏もうせば、
一切の諸仏・菩薩は、わが本師阿弥陀如来を信ずるに、そのいわれあるによりて、
わが本懐とおぼしめすがゆえに、別して諸仏をとりわき信ぜねども、阿弥陀一仏を信じたてまつるうちに、
一切の諸仏も菩薩もみなことごとくこもれるがゆえに、ただ阿弥陀如来を一心一向に帰命すれば、
一切の諸仏の智慧も功徳も、弥陀一体に帰せずということなきいわれなればなりとしるべし。
−−−【御文(蓮如上人)より】−−−
○<住職のコメント>
和讃とは、浄土真宗の教えの神髄を当時の流行歌の節に載せて詠われたものです。
『浄土和讃』は、浄土の教えそのものが説かれています。 先ず、阿弥陀仏の働きを説く「讃阿弥陀仏偈」48首、次に、 『無量寿経』の内容を述べる「大経意」22首、『観無量寿経』を説く9首、『阿弥陀経』の5首、 「諸京意」9首、そして『現世利益和讃』15首、最後に勢至菩薩を説いた8首、からなっています。 『高僧和讃』は、お釈迦さんから親鸞さんを繋ぐ、浄土の教えを深め伝えらえたインド、 中国、日本の七高僧の教えを、それぞれ説いた117首からなっています。
右上の引用文は、専修寺に伝わる和讃本ですが、最後の部分に「(これを)見て写す者は 必ず南無阿弥陀仏と唱えなさい」とあるのが要点です。 多くの言葉で説かれる「浄土の教え」ですが、究極的には「南無阿弥陀佛と口に唱えなさい」 ということ一つを勧めているのだという事です。
私たちの心、頭と言うのは、誠にやっかいなものです。 例えば「瞑想して心を無にしなさい」と言われたとしましょう。 「できますか?」まあ無理ですね。無になろうとすればするほど種々の思いが頭の中を巡って収拾がつきません。 そこで「ただ念仏」=「南無阿弥陀仏と唱えるのに徹底して執着しなさい」という教えです。 「ナムアミダブツ」「ナムアミダブツ」と一心に唱える時、他の種々のものは、 無とはいかないまでも軽くなっています。これが「念仏三昧」です。
執着するものが、お金や面子といった具体的なモノなら執着は害となります。 しかし「南無阿弥陀佛」には実体が無いので執着も害になりません。 大きな深い意味を秘めた謎の言葉、それが「南無阿弥陀佛」。 私たちの心が揺らぐとき、身が怒りに震える時、南無阿弥陀仏と口にして下さい。 謎の言葉に執着することで、心の、頭のピンが飛んで、普段の素直な状態に戻ることができるのです。
一方、下の引用文は『高僧和讃』の最後の部分で、七高僧の国と名前です。 また仏滅後1521年は「時は末法」を表します。 親鸞には常に時代社会を見つめる眼があるという事と、親鸞にとって、 七高僧と聖徳太子は同格だという事が示されています。が紙面が尽きました。この点はまた別の機会に。
―――以上『顛倒』2013年11月号 No.359より―――
- 目次
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